Bill Gibb, Knit Poncho Dress.

 

「有名は無名に勝てない」

陶芸家、河井寛次郎の言葉です。

先日ちょうど河井寛次郎展に足を運んだのですが、

作品は勿論の事、

河井氏の残した数々の言葉が

心に響きました。

 

 

陶芸家として絶賛されていた氏ですが、

柳宗悦からの酷評により

当時展開されていた民藝運動に出会い、

名もなき職人により生み出される

「用の美」

に打ち震え、

自身の名前を作品に入れる事すら

やめてしまったのだとか。

だからでしょうか、個人的には中期から後期の作品は

自由にのびのびと制作しているように見えました。

特に木彫りの作品は

家にポツンと置かれているだけでも、心が豊かになりそう

と釘付けに。

 

 

 

そして、ジャンルは違うのですが、

陽明学の安岡正篤先生も

「有名無力、無名有力」

と唱えています。

過激思想が若干自分の中にあるのかどうか、

それとも単純に幕末が好きだからなのかどうかは

分かりませんが、

朱子学よりは陽明学の方に興味があり

安岡先生の本を読んではいるのですが、

私の脳みそでは中々ゴールが見えないようです。

ですが、この言葉からも分かるように

無名であったことで昭和という激動の時代を

裏で操っていたとされる

安岡正篤。

「無名であった方が、陰から力を発揮できる」

深い、、そして、怖い、、、

 

 

というように、

我々人間はこの“名”というものに

捕らわれている部分が少なからずあるのではないでしょうか。

有名だから良い、無名だから悪い。

これはファッションにおいても言えると思います。

“名”が有る、つまり有名なブランドだから

間違いない。

もちろん、素晴らしいものも沢山ありますが、

そこに捕らわれるべきではなく、

名は通っていないデザイナーでも素晴らしいものは

数多くあるのです。

 

 

という訳でご紹介したいのは、

London Vintageを代表するデザイナーの一人でもある

Bill Gibb

言っておきますが、無名では全くありませんよ。

現代のデザイナーからも高く評価され

あのスウィンギング・ロンドンを代表するモデル

ツイッギーからは

「輝く私の騎士」

と信頼される程。

 

 

とはいえ、日本ではあまり知られておらず

現代ではほぼ無名に近いのではないでしょうか。

デザイナーとしては素晴らしい才能はありましたが、

ビジネスマンとしての才能はなかったようで、

80年代には経営破綻、そして病気によって亡くなり、

いつの間にか忘れ去られる。。

 

 

しかし、海外では

回顧展が行われる程、素晴らしい作品を

残したBill Gibb

 

 

 

イギリスファッションらしい

ロマンティックで幻想的な作風。

それもそのはず

彼の学校の仲間たちには

Ossie ClarkやZandra Rhodesもいた訳ですから

お互いに感性を共有していたのです。

 

 

 

またBill Gibbにとって

大きな存在でもあった

公私ともにパートナーであった

テキスタイル・デザイナーの

Kaffe Fassett

 

 

彼とタッグを組み、

多色使いで複雑なデザインのニットを

数多く生み出していきます。

 

 

 

亡くなる直前まで寄り添っていた

Kaffe Fassett

そして支えられてきた

Bill Gibb

二人が作成するニットは

“名”に関係なく

素晴らしき一着なのです。

 

 

有名、無名関係なく

生み出すのは人。

 

 

最後に

私の好きな河井寛次郎の言葉をもう一つ。

 

「どうしてものが

こんなに美しいのだ

人間万歳！！」

 

 

 

 

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